アノマリスの結末は1つしかない。 ルート分岐も、2周目で開く真エンドも、選択によって変わる別の結末も存在しない。プロデューサーの Kidokoro はTGS2026のインタビューで「本作はマルチエンディングか」と直接問われ、答えは一言だった。「無い」。

答えはそれで終わりだが、分岐が無いゲームでは道中の選択の意味が変わる。以下はその意味の話になる。

問いは直接投げられている

TGS2026の合同インタビューで、戦闘、異形化スキル、ボスの設計、そして作品の空気について聞かれた同じ場で、結末の構造も確認されている。マルチエンディングの有無という質問は、スキルの使用が物語に影響するかという問いの直後に置かれ、その中で最も短い答えが返った。

短さには意味がある。作り手が結末について言葉を濁すときは、条件付きの内容が存在することが多い。はっきり「無い」と言い切るのは、シナリオが一本の線として書かれたという宣言に近い。本作のシナリオは田中ロミオが担当しており、構造もそれに合わせて一直線に組まれている。

選択肢が変えるのは物語ではなく理解

会話の選択肢はあり、進行に応じてサブクエストも増える。だがそのどれもが筋道を付け替えることはない。変わるのは、エンディングに到達した時点でプレイヤーが何を分かっているかだ。誰と過ごしたか、どの調査報告書を拾ったか、異界の成り立ちについてどこまで組み立てられたか。

この区別は、2周目をやるかどうかを決めるときに効いてくる。別の結末を見るための周回ではないので、物語目的の再走は噛み合わない。武器の種類を変える、難易度を上げる、持ち帰りの記録を詰める。周回の動機はそちら側にある。

異形化スキルの使用量も関係しない

同じインタビューで、異形化スキルを多用すると水無月が少しずつ人ではなくなっていくように見える点について、物語への影響を問われている。答えは「影響しない」、そして「思う存分使ってほしい」というものだった。

つまりあの変化は演出であって、隠された善悪のメーターではない。どこかで集計され、後半に反映される類のものではない。1周目に警戒してスキルを温存していたなら、それは戦闘力だけを削って何も得ていない。

単一結末がこの構造に合う理由

アノマリスは潜入し、回収し、戻り、強化する ループ でできている。分岐する物語はこの形と衝突する。分岐は書かれ、試され、発売するすべての言語で音を入れる必要があり、その見返りは一度しか訪れない。

代わりに、ゲームは反復可能な側に変化を置いた。進行に応じて敵の配置が変わり、ボスは一度倒したあと挙動を変え、難易度は物語ではなく資源の圧力を動かす。Kidokoro が語った作品の狙いは「違和感」であって、見慣れた風景の中に潜む不安の再現だ。空気は分岐を必要としない。

2周目の目的は結末ではない

エンディングを見ることではない。クレジットの後もセーブは続き、異界は開いたままで、コレクションの ループ は1周目より良い装備で回り続ける。2周目に変わるのは効率のほうだ。どのルートを通るか、何を捨てるか、タイマーが意味を持ち始める前にどこまで進めるか。

別の結論を見ることが再走の理由なら、このゲームはその期待には応えない。買う前に知っておいたほうがいい種類の話だ。同じ内容をよりきれいに通すことに価値を感じるなら、構造はそれを支えている。

エンディングの後に残るもの

物語は決まった地点で終わり、その後に新しい筋書きは始まらない。残るのは区画と装備と、まだ拾っていない素材と報告書になる。何がどこまで続くのか、具体的にどこまで用意されているのかは、クリア後と周回のページで扱っている。

向く人、向かない人

クリアを一つの通過点として扱い、隠しルートを開けてからもう一度通す遊び方を好む人には、ここには何も用意されていない。収集品で開く裏ルートも、関係値で分かれる結末も、スキルの閾値で変わる結末も存在しない。

話に明確な終わりがあり、そのあとに別のレイヤーとして遊べるシステムがある、という形を求めている人には噛み合う。物語と ループ は意図的に切り離されている。話は一度だけ終わり、ループ は終わらない。

短くまとめると

結末は1つ。分岐も真エンドも無く、スキルの使い方も会話の選択も物語に影響しない。周回の価値は持ち帰りと装備の側だけにある。隠しエンディングがあるかのように語る情報は、別のゲームの話をしている。